「さっそく双葉町、ふるさと遠足へ行ってみましょう!」
先生の声でスタートした「2019バーチャルふるさと遠足」。
11月20日(水)、いわき市にある仮設校舎の体育館に、双葉町立双葉南・北小学校の児童と保護者など約50人が集まりました。体育館には200インチのスクリーンやプロジェクター、カメラなど様々な機器がセットされています。 震災から8年半が経ち、震災の記憶が薄れていく中、子どもたちにふるさとをより身近に感じてほしいとの思いから、NTTドコモ、凸版印刷株式会社、ふたばプロジェクトの共同企画でこの授業は開催されました。 福島県双葉町は東日本大震災から8年半が経過した今も、町の96%が帰還困難区域に指定され、15歳未満の立入りができません。「IoA仮想テレポーテーション」技術を活用して4K映像と5Gを見据えた通信で、震災後一度も立ち入ったことがない、生まれてから一度も立ち入ったことがない“ふるさと”と子どもたちをつなぐこの取り組み。
まずスクリーンに登場したのは、さっきまで一緒に学校にいたはずの、南小の泉田校長先生。校長先生が手を振る姿がスクリーンに映し出されると、体育館には子どもたちの歓声が響きました。校長先生がいるのは双葉町内の「ふれあい広場」。双葉町といわき市をライブ中継でつないで授業が始まりました。
「○○くん、ちゃんとこっち向いて先生の話きいてね!」
校長先生の声に子どもたちもちょっと驚いた様子。
「これから双葉町を空から見てみましょう!」と、タケコプターを頭に付けた校長先生の声と同時に画面が切り替わり、スクリーンいっぱいに、ドローンで空撮されている今の双葉町の景色が映し出されました。 震災前と変わらない青空とあぶくまの山並み。双葉町内の景色や校舎、復興が進む町内の様子を見て、子どもたちは、「すごーい」「海に行きたーい」と、ワクワクした表情を見せてくれました。
空中遊泳で双葉町の景色を楽しんだ後、震災前の双葉町の様子を南小卒業生の高野先生から紹介されました。 震災前の双葉町の映像や写真がスクリーンに映し出され、子どものころ、川で魚とりをしたり、ベーゴマやめんこで遊んだこと、双葉町には漬物やラーメンのおいしいお店があったこと、ダルマ市や盆踊り、震災前の学校行事や双葉町のバラ園や海、駅などなど、たくさんの思い出が語られました。
次に、将来双葉町へ帰還して安心して生活するための取り組みを紹介。
再びふれあい広場と体育館をライブ中継でつなぎ、町内で復旧作業を行っている「前田建設株式会社」の作業員の方がスクリーンに登場しました。 除染作業をするときの服装、道路や家屋を除染するときの実際の機械や道具をつかって作業の様子を見せてもらいました。
子どもたちからの質問タイムでは、
「10月の台風の被害はどうだったのか」
「町内の除染作業はどのくらい進んでいるのか」
などの質問に双葉町にいる作業員の方が丁寧に答えてくれました。
「作業員の方の体調はどうですか?」と子どもたちが作業員の体調を気遣う場面も。作業員の笑顔がスクリーンに映し出されました。 約80キロ離れた双葉町のふれあい広場といわき市の校舎の体育館、最新の技術と機材を使って、時間と場所と心がつながりました!
次は、来年の3月に開業が予定されているJR双葉駅の建設工事をしているJR東日本水戸支社の方にお話を伺いました。車掌さんの制服を着た職員の方が体育館に登場し、建設中の新駅舎やホームの様子、新駅舎の完成イメージ図、震災前の駅舎や双葉駅のシンボルからくり時計も紹介されました。 新しい駅舎は、エレベーターや点字ブロックが備えられた「みんなに優しい配慮をした駅」となるそうで、11月時点で駅舎の工事は65%が完成しているとのこと。 駅を建設する上での一番の苦労として、2020年のオリンピックに向けた準備の影響で、駅舎を作るための鉄骨がなかなか手に入らないこと、現在は震災時に止まったままとなっている双葉駅のシンボルのからくり時計をぜひ双葉町のシンボルとして残してほしいと思っていること、などさまざまな思いが語られました。
「双葉町に戻った人と新たに双葉町に住む人たちの心を「つなぐ」こと、双葉町を未来に「つなぐ」こと、双葉町に賑わいを取り戻し明るい駅になるように、という想いを込めて新駅舎の建設に携わっている」 と、毎日双葉町で仕事をする上での心構えまでお話ししてくれました。 お二人の話を聞いて私も来年3月の開通がますます楽しみになりました。
双葉町の復興に向けて尽力してくださっているみなさんのお話の後、再び双葉町といわき市の体育館をライブ中継でつないで、「自分たちが知らないところで町がきれいになり、電車も通れるようになっている。感謝します」 と、子どもたちから今日の授業の感想やお礼の言葉が送られました。
最後はふれあい広場にいる作業員のみなさんと子どもたちがハイタッチをしてお別れしました。 ここで使われたのが、「ハイタッチデバイス」。双葉町内の作業員といわき市の子どもたちが同時にこのデバイスに触れると、実際にハイタッチしたかのように、機械から感触が伝わります。実際にハイタッチを体験した子どもたちは少しびっくりした様子で、かわいい笑顔を見せてくれました。
授業の最後に先生からのお話。「たくさんの方が双葉町の復興のために働いています。双葉町で作業している方々は、今日、ここにいるみなさんが双葉町に帰ってくれることを願っています。その思いを心にとめて生活していきましょう。」
子どもたちはこの授業を通してふるさと双葉町についてどんなことを思ったのでしょうか。 この授業の学びは12月に郡山市で行われる「ふるさと創造学サミット」で、子どもたちから発表されます。
この日の授業でふるさとのことを学ぶ子どもたちの表情はとても生き生きとしていて、私たちも何か大切なことに気付かされる、そんな時間となりました。子どもたちがふるさと双葉町をより身近に感じ、双葉町を大切に思えるきっかけとなるような取り組みをふたばプロジェクトの活動として続けていかなければならないと、気持ちを新たにしました。